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福島県の甲状腺がん症例の臨床病理学的データ:2016年10月

*この記事の英語版はこちら

2016年9月26〜27日に福島市で、第5回福島国際専門家会議「福島における甲状腺課題の解決に向けて~チェルノブイリ30周年の教訓を福島原発事故5年に活かす」が開催された。(動画やパワーポイント資料はこちらで公開されている。)この会議の主催は日本財団、共催は福島県立医科大学、長崎大学と笹川記念保健協力財団、後援は福島県、日本医師会、日本看護協会、日本薬剤師会と広島大学だった。プログラムPDFは、こちらからダウンロードできる。2011年以降、2012年以外は毎年開催されているこの会議については、福島県立医科大学の放射線医学県民健康管理センター英語ページアーカイブが収録されている(第1回第2回第3回第4回)。首相官邸災害対策ページの原子力災害専門家グループのセクションには、山下俊一氏による第2回第3回の日本語報告がある。

発表者の一部は、”福島はチェルノブイリとは違う” ことを強調し、これまでの福島県で見つかっている甲状腺がんが大規模スクリーニング検査を行った結果のスクリーニング効果であると主張し、がん検診による過剰診断のリスクを強調した。この会議では、福島県で行なわれている甲状腺検査についての何らかの声明が出されることになっていたので、もしや検査の縮小が提言されるのではないかと懸念されたが、最後のパネルディスカッションはまとまった意見に繋がらなかった。提言は後日発表されるということである。

福島県立医科大学の甲状腺外科医 鈴木眞一氏の発表は、甲状腺検査の結果についてであったが、冒頭に甲状腺検査の基本情報と1〜2巡目の結果が紹介された後にパワーポイントのスライドに映り始めたのは、2015年8月31日以来まったく公表されていない、手術症例の詳細だった。鈴木眞一氏は、県民健康調査検討委員会に初期から参加し、甲状腺検査結果を発表してきていたが、2015年春からは甲状腺検査関連の臨床に集中することになり、2015年5月18日の第19回県民健康調査検討委員会以降は、甲状腺検査の検査自体の責任者である大津留晶氏が検討委員会で結果発表を行っている。福島県立医科大学の基本スタンスは、細胞診、手術や経過観察などは甲状腺検査そのものから通常診療に移行するため、臨床情報は個人の医療情報となるので公表できないというものである。その一方では、学会や論文で一部の…

メモ:2016年9月14日発表の甲状腺検査結果の数字の整理

2016年9月14日に開催された第24回県民健康調査検討委員会で発表された、甲状腺検査結果の数字をメモ的に整理した。データは2016年6月30日時点のものである。1巡目結果は、前回の2016年6月6日開催の第23回県民健康調査検討委員会で公表された追補版に掲載されているデータであるが、前回のメモから変化はない。2巡目結果は、まだ二次検査の進捗率が66.6%であり、確定版ではない。2016年5月1日から開始された3巡目結果によると、まだ一次検査受診者の結果で確定しているものはない。また、2巡目で悪性ないし悪性疑いとされた59人の先行検査結果についても、簡単にまとめた。

先行検査(1巡目)
悪性ないし悪性疑い 116人
手術症例      102人(前回から変化なし)(良性結節 1人と、甲状腺がん 101人:乳頭がん100人、低分化がん1人)
手術待ち       14人

本格検査(2巡目)
悪性ないし悪性疑い 59人(前回から2人増)
手術症例      34人(前回から4人増)(甲状腺がん 34人:乳頭がん 33人、その他の甲状腺がん**1人)
手術待ち      25人

合計
悪性ないし悪性疑い 175人(良性結節を除くと174人
手術症例      136人(良性結節 1人と、甲状腺がん 135人:乳頭がん 133人、低分化がん 1人、その他の甲状腺がん**1人)
手術待ち        39人

(**「その他の甲状腺がん」とは、2015年11月に出版された甲状腺癌取り扱い規約第7版内で、「その他の甲状腺がん」と分類されている甲状腺がんのひとつであり、福島県立医科大学の大津留氏の検討委員会中の発言によると、低分化がんでも未分化がんでもなく、分化がんではあり、放射線の影響が考えられるタイプの甲状腺がんではない、とのこと。)

***

本格検査で悪性ないし悪性疑いと診断された59人の先行検査結果
A1判定:28人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:26人(結節 7人、のう胞 19人)
B判定: 5人(先行検査では最低2人が細胞診をしている)

和訳と考察 長崎大学&ベラルーシ研究発表「放射線と甲状腺がんリスク:福島とチェルノブイリ」

The Lancet: Diabetes and Endocrinology (「ランセット:糖尿病と内分泌学」)2016年8月号に、長崎大学(高村昇、折田真紀子、ウラジミール・サエンコ、山下俊一、長瀧重信)とベラルーシ(ユーリ・デミチク)の共同研究が、コレスポンデンスとして掲載された。これは、2016年8月4日に福島民報に掲載された記事で言及されている論文だと思われる。以下は非公式和訳である。



放射線と甲状腺がんリスク:福島とチェルノブイリ
ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所事故から30年、そして福島第一原子力発電所での危機から5年が過ぎた。チェルノブイリ災害後、ベラルーシ、ロシアとウクライナにおいて、事故時に放出された放射性ヨウ素に被ばくした小児と思春期の青年らの間で甲状腺がんのかなりの増加が報告された。このチェルノブイリでの経験に基づいて、福島県民健康調査の枠組み内で甲状腺超音波検査が行われている。この検査は福島事故当時18歳未満(原文ママ:実際には事故当時18歳「以下」)だった住民すべて(およそ36万人)が対象である。2011年10月から2014年3月に実施されたスクリーニングの1巡目では、受診者 300,476人中113人が、甲状腺悪性腫瘍確定または疑いとされた。
福島事故後の甲状腺がんの発見は、現代的で精度の高い超音波技術によるスクリーニングの影響かもしれない。この問題を調査するために、福島での放射線被ばくと甲状腺がんの間の因果関係は、特にチェルノブイリからの既存の証拠に対して注意深く評価されるべきである。
チェルノブイリでは、被ばくした小児の甲状腺被ばく線量平均値は、ベラルーシで 560 mSv[SD 1180]、ウクライナで 770 mSv[260]と推計された。一方、事故後に福島の1000人以上の 0〜14歳の小児の 99%で報告された甲状腺被ばく線量は、15 mSv未満だった。これらの低いレベルでは、福島での被ばく線量が、被ばくの可能性から 4年以内に検出可能な甲状腺がんの過剰例を起こした可能性は低い。
もうひとつの考慮すべき重要点は、2つの事故後の患者の年齢である。ベラルーシでは、事故前に設置されたがん登録によると、事故後最初の4年間(1986〜1989年)に被ばく時に0〜15歳だった患者で25例の甲状腺がんの手術例が報告された。この数字は、199…

メモ:2016年6月6日発表の甲状腺検査結果の数字の整理および関連情報

2016年6月6日に開催された第23回県民健康調査検討委員会で発表された、甲状腺検査結果の数字をメモ的に整理した。データは2016年3月31日時点のものである。また、本格検査で悪性ないし悪性疑いとされた57人の先行検査結果についても、簡単にまとめた。

今回、先行検査結果の追補版(平成27年度)が出され、2015年8月の確定版以降の追加データが公表された。(悪性ないし悪性疑いは、前回のメモですでに追加データが反映されている。)先行検査の二次検査受診者2128人中、結果が確定していない人が42人いるが、追加結果はまた追補版で報告されるらしい。二次検査未受診者168人に関しては、そのうち60人が本格検査で二次検査を受診しているとのこと。追補版では、確定版で低分化がんと確定診断された3人中、平成23年度と平成24年度からそれぞれ1人ずつが、乳頭がんと再診断されている。これは、2015年11月に出版された「甲状腺癌取扱い規約 第7版」での低分化がん診断基準の変化によるものであると説明された。第7版の変更内容の概論は、2016年5月末に開催された第35回日本乳腺甲状腺超音波医学会学術集会の予稿集で閲覧できる。

本格検査(資料はこちら)では初めて、事故当時5歳男性が悪性ないし悪性疑いとされた。この症例の詳細は公表されなかったが、細胞診結果と市町村別二次検査実施状況から、いわき市の男児と思われる。平成27年度実施対象市町村の受診者の4割を占めるいわき市の二次検査は、対象者322人の105人しか受診しておらず、そのうち74人で結果が確定している。つまり、二次検査対象者の4分の1でしか結果がわかっていない。(ちなみに、2011年3月末に行われた小児甲状腺被ばく調査「1080人調査」で甲状腺被ばく線量が最大だったのは、いわき市の137人(0〜14歳)の1人だった。この調査の経緯を記録した資料はこちら。)

検討委員会はこれまで、福島県で事故当時5歳以下の症例がないことを、放射線影響でないという理由のひとつとして挙げてきた。しかし、検討委員会の前委員長の山下俊一氏と甲状腺検査の臨床部門責任者の鈴木眞一氏が共著者に名を連ね、2014年10月に米国甲状腺学会の学術誌”Thyroid”に投稿されたエディターへのレター(和訳はこちら)では、ウクライナで事故当時5歳以下での甲状腺がんが増え始めたのは、事故…

メモ:2016年2月15日発表の甲状腺検査結果の数字の整理

2016年2月15日に開催された第22回県民健康調査検討委員会で発表された、甲状腺検査結果の数字をメモ的に整理した。数字は、2015年12月31日時点のものである。また、本格検査で悪性ないし悪性疑いとされた51人の先行検査結果についても、簡単にまとめた。

先行検査は前回で確定版となっているので、今回は検査結果の紙面報告なし。次回の検討委員会で追補版を出すとのこと。本格検査の資料はこちら

先行検査(一巡目)
悪性ないし悪性疑い 116人(前回から1人増)
手術症例      101人(前回から変化なし)(良性結節 1人と、甲状腺がん 100人:乳頭がん97人、低分化がん3人)
手術待ち       15人

本格検査(二巡目)
悪性ないし悪性疑い 51人(前回から12人増)
手術症例      16人(前回から1人増)(甲状腺がん 16人:乳頭がん 16人)
手術待ち      35人

合計
悪性ないし悪性疑い 167人(良性結節を除くと166人で、この数字がよく報道されている)
手術症例      117人(良性結節 1人と、甲状腺がん 116人:乳頭がん 113人、低分化がん 3人)
手術待ち        50人

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本格検査で悪性ないし悪性疑いと診断された51人の先行検査結果
A1判定:25人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:22人(結節 7人、のう胞 15人)
B判定: 4人(先行検査では2人が細胞診をしている)