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和訳:イアン・フェアリー「原子力発電所近辺での小児がんを説明する仮説」

原子力発電所近辺での小児がんを説明する仮説イアン・フェアリー
英語原文はこちら(有料)、英語原文PDFはこちら 注:この和訳は、著者であるイアン・フェアリー氏の許可を得ている。
「原子力発電所近辺での小児がんを説明する仮説」by イアン・フェアリー by Yuri Hiranuma

ハイライト
原子力発電所近辺でのがんの増加について、世界中で60以上の調査が行われてきており、そのほとんどで白血病の増加をしめしている。ドイツ政府のKiKK調査研究は、非常に有力な証拠を提供している。本仮説は、がんは原発近辺に居住する妊婦への放射線被ばくによって発生すると提案する。燃料棒交換時の放射性核種の大気中への放出スパイク(急上昇)が被ばくの増加に繋がる可能性がある。公式の線量推計値とリスク増加との間の食い違いについての説明がされている。

アブストラクト
世界中の60以上の疫学研究により、原発近辺での小児がん発症率が調査されてきた。ほとんどの研究で白血病の増加が示されている。このうちのひとつ、ドイツ政府から委託された2008年KiKK調査研究では、ドイツのすべての原発で、5 km以内に居住している乳幼児においての相対リスク(RR)が、全がんで1.6、白血病で2.2であることが判明した。KiKK調査研究は、これらのがんの増加の理由についての議論を再燃させた。本稿で提案されている仮説は、がんの増加は、原発近くに居住する妊婦への放射線被ばくにより引き起こされるとしている。しかし、どのような理論でも、原発からの放出物による公式線量推計値と観察されたリスク増加の間に1万倍以上の食い違いがあることを説明できねばならない。ひとつの説明としては、原発からの放射性核種の大気放出スパイクによる線量が、年間平均を用いることにより希釈されてしまっている公式モデルの線量推計値よりも、大幅に上回る可能性が考えられる。さらに、胎芽と胎児へのリスクは、成人へのリスクよりも大きく、造血組織の放射線感受性は、新生児よりも胎芽と胎児でもっと大きいと思われる。被ばく線量の増加の可能性と線量あたりのリスクの増加の可能性を掛け合わせた積が、説明となるかもしれない。
1.はじめに
1950年代初めに、Folleyら(1952)により、原爆被爆者において白血病リスクの増加が観察された。1950年末には、Stewartら(1958)が放射線被ばく…

福島県の小児甲状腺がん症例について現在わかっていること

福島県の県民健康調査の甲状腺検査により診断された甲状腺がん症例の詳細について、現時点で判明している情報をまとめた。 1)2014年11月11日に開催された第4回 甲状腺検査評価部会で鈴木眞一氏によって公表された手術の適応症例について。 2)2014年11月14日の日本甲状腺学会学術集会での鈴木眞一氏の発表「小児〜若年者における甲状腺がん発症関連遺伝子群の同定と発症機序の解明」の抄録テキストおよび口頭発表からの情報。学術集会の質疑応答時の長瀧重信氏の発言も。 3)2014年8月28日の日本癌治療学会学術集会での鈴木眞一氏の発表「福島における小児甲状腺癌治療」の抄録テキスト。
なお、同様の情報の英語版はこちら。 ***** 第4回 甲状腺検査評価部会  資料3 手術の適応症例について
震災後 3 年を経過し、2014 年 6 月 30 日現在までの二次検査者 1,848 名からの細胞診実施者 485 名中、悪性ないし悪性疑いは 104 例であり、うち 58 例がすでに外科手術を施行されている。 58例中55例が福島医大甲状腺内分泌外科で実施され、3例は他施設であった。また、55 例中1例は術後良性結節と判明したため甲状腺癌 54 例につき検討した。 病理結果は 52 例が乳頭癌、2例が低分化癌であった。 術前診断では、腫瘍径 10 ㎜超は 42 例(78%)、10 ㎜以下は 12 例(22%)であった。また、10 ㎜以下 12 例のうちリンパ節転移、遠隔転移が疑われるものは 3 例(5%)、疑われないもの(cT1acN0cM0)は 9 例(17%)であった。 この9例のうち7例は気管や反回神経に近接もしくは甲状腺被膜外への進展が疑われ、残りの2例は非手術経過観察も勧めたが本人の希望で手術となった。 なお、リンパ節転移は 17 例(31%)が陽性であり、遠隔転移は 2 例(4%)に多発性肺転移を疑った。 術式は、甲状腺全摘 5 例(9%)、片葉切除 49 例(91%)、リンパ節郭清は全例に実施し、中央領域のみ実施が 67%、外側領域まで実施が 33%であった。出来る限り 3cm の小切開創にて行った。 術後病理診断では、腫瘍径 10 ㎜以下は 15 例(28%)かつリンパ節転移、遠隔転移のないもの(pT1a pN0 M0)は 3 例(6%)であった。甲状腺外浸潤 pEX1は 37%に認め、リンパ節転…

国連第4委員会の議長とUNSCEAR事務局長に手渡された、UNSCEARフクシマ報告書の改訂を求める要請書の和訳

2014年10月24日にニューヨーク市で開催された国際連合第69セッション第4委員会で、国際核戦争防止会議(IPPNW)の米国支部である社会的責任を果たすための医師団(PSR)の代表と特定非利益活動法人ヒューマンライツナウの代表が、第4委員会の議長およびUNSCEAR事務局長のクリック氏に手渡した要請書の和訳。43の市民社会グループが賛同し、署名した。
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2014年10月24日
国連総会69会期第4委員会の委員各位 UNSCEAR委員各位 国連総会メンバー各位

議題:市民社会グループは、4月に公表された原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)報告書:「東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響」の改訂を要求する。

2011年の福島災害により、国連による電離放射線の悪影響の監視が、世界的に最重要な問題となった。監視の目的と基準は、健康と福祉への人権の保護と促進であるべきで、これは、人工電離放射線への被ばくが可能な限り存在しない環境をも含む。われわれ下記署名者は、 UNSCEAR報告書[i]の科学的結論、そして報告書から除外された科学的証拠を、第4委員会が批判的に調査することを要請する。
国際核戦争防止医師会議(IPPNW)の、社会的責任を果たす医師団(米国支部:PSR)とIPPNWドイツ支部を含む19ヶ国支部の医師らは、UNSCEAR報告書の批判文書[ii]を作成・発行・公表し、UNSCEARによって使われた仮定とデータ、そしてそれから帰結した解釈と結論に疑問を呈した。この批判文書は、UNSCEARが福島災害による健康影響をどのように系統的に過小評価し、軽視したかを論証している。

われわれは、UNSCEAR委員会メンバーらが、福島原子力大惨事に関する広範で複雑なデータの評価にかなりの努力を費やしたことには感謝する。しかしながら、現在も将来も「識別可能な影響がない」というUNSCEARの結論は、常識に反し、かつUNSCEARの信頼性を台無しにするものである。批判文書は、UNSCEAR報告書そのものに基づくと、福島放射能フォールアウトにより、日本で、約1000件の甲状腺癌症例、および4,300−16,800件のその他の癌症例の過剰発生が予期されると記している。これらの癌を経験する個人、その家族とコミュニティー、そしてその他の放射線誘発性疾患に罹患…

国際連合総会第69セッション第4委員会での日本代表のステートメントの和訳 

2014年10月24日の国連総会第69セッション第4委員会で、議題項目48「原子放射線の影響」についてステートメントを述べた13ヶ国のリストから、午後4時21分から25分の間に口述された日本代表のステートメントを和訳した。動画へのリンクはこちら。 ちなみに、昨年のステートメントの一部はこちら


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日本代表によるステートメント 国際連合第69セッション第4委員会 議題項目48:原子放射線の影響
2014年10月24日

議長、

   まずは、国際連合第69セッション第4委員会での、特にこの重要な議題項目、「原子放射線の影響」においての、あなたの効果的な議長職に心からの謝辞を述べたいと思います。

   原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は、日本が1955年以来の設立メンバー国でもありますが、電離放射線への被ばくの影響について科学的評価と報告を提供するという極めて重要な役割を果たしています。委員会の仕事は、われわれが放射線リスクを評価し、皆が恩恵を受ける放射線防護と安全基準を確立する助けとなっています。

   特に東京電力株式会社(TEPCO)の福島第一原子力発電所での2011年の事故に照らして、原子力技術の安全性に長年コミットしてきている国として、われわれは、委員会の仕事を高く評価しています。この点では、2013年4月に出版された報告書「電離放射線の線源、影響およびリスク」とその附属書「2011年東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響」を賞讃、そして感謝いたします。

   9月に、UNSCEAR委員長のカール=マグナス・ラーソン氏とそのチームが来日されました。福島で、訪問団は、最近出版された報告書についてのパグリック・ダイアログのイベントを開催されました。報告書は、他の点と共に、全体的には事故後の発がん率には変わりがないだろうと示しました。UNSCEARのこの報告書とパグリック・ダイアログは、科学的知識に基づいた知見を提供したために、歓迎されました。また、それらは、経験と学んだ教訓を国際コミュニティーと共有するにおいても役だっています。

議長、

   これらは、UNSCEARが原子力の安全性において果たしている極めて重要な役割の例のごく一部です。その重要な役割を認め、日本はこれまでも、そしてこれからもUNSCEARの活動を支援し続けます。これに関…

甲状腺検査の偽陽性について:岡山大学・津田敏秀教授の説明「診断学の基礎知識と甲状腺がん議論の整理」(第4.41版)

(注:2014年10月31日に、現時点での最終版の第4.41版に差し替えられた)


2014年10月20日午後2時より、環境省の「第12回東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」が開催された。その前日の2014年10月19日午前5時00分付けで、大岩ゆり記者による朝日新聞デジタル記事『甲状腺検査の問題指摘「がんの疑い」判定、福島の子に負担 専門家会議』が公表された。この記事は、環境省会議資料のリーク記事であった。その証拠に、会議冒頭で、環境省の得津馨参事官がこのように述べている。「それから、昨日、本会議の資料の一部と思われる内容が報道され、大変失礼致しました。今後とも引き続き科学的・医学的な見地から議論を続けてございますけれども、事務局と致しましては、資料の管理等、さらに気をつけて行きたいと思っております。」(動画

この記事では、会議で公表された「中間とりまとめのたたき台」に言及しており、中でも目を引いたのは次の記述であった。1,744人が「偽陽性」だとは初耳だったからである。

『たたき台では、無症状のまま問題にならないがんを見つける可能性や、がんではないのにがんの疑いがあると判定される「偽陽性」の増加、手術で合併症が起きる可能性などの問題点も指摘。これまで検査を受けた約30万人のうち1744人が偽陽性だったと認定した。うち381人は、超音波検査などを経て、甲状腺に針を刺す検査も受けたとしている。』

そしてこの供述は、環境省事務局配布資料3「中間とりまとめに向けた論点整理等(線量評価部分以外)」の10ページ目(画像)から引用されていたようだった。




「ここで言う偽陽性 とは、がんが無いにも関わらずがんがあるかもしれないと判断されることを指す。 」と定義した上で、「一次検査で B 又は C 判定とされて二次検査を受診し結果が確定した 1,848 人のうち 1,744 人が、穿刺吸引細胞診を受けた 485 人のうち 381 人が、いずれも偽陽性であったと言える(悪性ないし悪性疑いと診断されたのは 104 人)。」と述べられている。
会議中に、福島県立医科大学副学長の阿部委員がこの供述に関して異議を唱え、福島医大としては、手術後に良性だと判明した1名のみが偽陽性だと考えている、と述べた。

会議を中継していたアワープラネット…