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2013年9月20日金曜日

日本への短期留学は安全か?某留学生の経験談

20代前半の米国女性が、日本へ短期留学した後に体調を崩した経験をメールで語ってくれたので、原文を和訳して紹介する。
なお、原文はこちら。
http://fukushimavoice-eng2.blogspot.com/2013/09/is-study-abroad-program-in-japan-safe.html


私は、去年(2012年)の秋に日本へ短期留学しました。8月末から11月末まで日本に滞在しました。ほとんどの時間は京都で過ごしましたが、週末には近辺へ旅行にも出かけました。日本滞在期間の最後の2週間は独立研究プロジェクトだったので、東京で5日間、日光で2日間、そして仙台で2日間過ごしました。日光にいる間、ずっと頭痛がありました。そこから新幹線で福島を通って仙台へ行きました。新幹線が福島を通過している間、とてもひどい偏頭痛がありましたが、仙台に着いた頃には治っていました。2009年2月に自動車事故に会って脳震盪を起こして以来、偏頭痛が時々ありました。しかし、それでも、福島を通過する最低6ヶ月前から、偏頭痛は全くありませんでした。

日光と仙台へ行った後、3週間経ってから、頭痛と偏頭痛がよく起こりました。その当時は、頭痛と偏頭痛が放射線被ばくのせいなのか、それとも高山病や寝不足のせいなのか分かりませんでした。しかし、私にとって尋常ではありませんでした。

米国へ帰国して1週間後に、放射線被ばくのもっとひどい症状が現れました。1月の半ばまで、鼻血が毎日出ました。胃痛と吐き気が頻繁に起こりました。12月半ばに、嘔吐が48時間続きました。食中毒になったことはありますが、これはそれよりもっとひどかったです。それまでの人生での、一番苦しい経験のひとつでした。48時間が過ぎたら、たまに嘔吐がありましたが、ひっきりなしではありませんでした。1月半ばまで、頭痛、偏頭痛、吐き気とめまいが続きました。その間、旅行中だったので、医師を受診することはできませんでした。この旅行は日本へ行く前から計画していたことで、主治医から遠くに居たので、受診することができなかったのです。症状がおさまってから主治医を受診した時、その症状が放射線病だったのか、今でも放射能が体内に残っているかは分からないと言われました。医師や放射線の専門家によると、私の症状は、低線量放射線被ばくに典型的に見られるものだと言う事でした。そんなに短期間の放射線被ばくでも、あんなにひどい症状が出るということにびっくりしました。ちなみに、1月半ば以降は、これらの症状は起こっていません。

日光と仙台では、魚は食べませんでした。ペットボトルの水と緑茶を飲みました。日光の宿舎では、熱いお茶が出されたのを飲みました。東京では、築地市場の近くでお寿司を食べました。それ以外の魚は食べていません。乳製品は食べませんでした。お米や野菜などの産地がどこかは、漢字が良く読めなかったために、分かりませんでした。

2013年9月15日日曜日

ケネディー大統領:我々の子供たちや孫たちは、単なる統計ではない。

「歴史に残るスピーチ」サイトより
http://www.presidentialrhetoric.com/historicspeeches/kennedy/nucleartestban.html
動画(12分42秒より)
http://www.jfklibrary.org/Asset-Viewer/ZNOo49DpRUa-kMetjWmSyg.aspx

ジョン・F・ケネディー大統領
核実験禁止条約についての米国民へのラジオとテレビのスピーチ
ワシントンDC
1963年7月26日

骨に癌ができ、血液は白血病を患い、肺に毒が入ってしまった子供たちや孫たちの数は、自然由来の健康被害と比べると統計的に小さいと思えるかもしれない。
しかし、これは自然由来の健康被害ではない。さらに、統計的な問題でもない。
人間の命が1人分でさえも失われるということ、あるいは、赤ちゃんが1人でも奇形を持って生まれてくるということは、例えその赤ちゃんが、我々が皆死んでしまったずっと後に生まれて来るかもしれなくても、我々全員にとって重要なことであるべきだ。
我々の子供たちや孫たちは、我々が無関心を装ってもよいような、単なる統計ではない。


英語原文

JOHN F. KENNEDY
Radio and Television Address to the American People on the Nuclear Test Ban Treaty
Washington, D.C.
July 26, 1963

The number of children and grandchildren with cancer in their bones, with leukemia in their blood, or with poison in their lungs might seem statistically small to some, in comparison with natural health hazards. But this is not a natural health hazard-and it is not a statistical issue. The loss of even one human life, or the malformation of even one baby-who may be born long after all of us have gone-should be of concern to us all. Our children and grandchildren are not merely statistics towards which we can be indifferent.

2013年9月14日土曜日

低線量での放射線誘発性リスクの未来像とは?

先日、Radiation and Environmental Biophysics (放射線・環境生物物理学)という科学雑誌で興味深い論文を見つけたので、紹介する。

研究者・専門家らには、原爆被爆者のデータに基づいた放射線防護の概念そのものが、チェルノブイリでもフクシマでも通用しなくなってきているのに気づき、何人までの癌なら許容範囲内かという考えに基づかず、人間だけでなく生態系全体を総括した、真の意味での放射線防護を生み出してほしいと切に願う。人々には、健康的な環境で生きるという、基本的・普遍的権利があるのだから。


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"Uncomfortable issues in radiation protection posed by low-dose radiobiology"
Carmel Mothersill, Colin Seymour
Radiation and Environmental Biophysics
August 2013, Volume 52, Issue 3, pp 293-298 
http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00411-013-0472-y

Abstract

This paper aims to stimulate discussion about the relevance for radiation protection of recent findings in low-dose radiobiology. Issues are raised which suggest that low-dose effects are much more complex than has been previously assumed. These include genomic instability, bystander effects, multiple stressor exposures and chronic exposures. To date, these have been accepted as being relevant issues, but there is no clear way to integrate knowledge about these effects into the existing radiation protection framework. A further issue which might actually lead to some fruitful approaches for human radiation protection is the need to develop a new framework for protecting non-human biota. The brainstorming that is being applied to develop effective and practical ways to protect ecosystems widens the debate from the narrow focus of human protection which is currently about protecting humans from radiation-induced cancers.


「低線量放射線生物学によって提示される、放射線防護のやっかいな問題」

アブストラクト

この論文は、低線量放射線生物学の最近の知見の、放射線防護における妥当性についての議論を活気づけることが目的である。低線量の影響がこれまでに確信されているよりも、ずっと複雑であると示唆する問題が提示されている。これらは、ゲノム不安定性、バイスタンダー効果、複数ストレス要因への曝露、そして慢性被ばくである。今までに、これらは妥当な問題であると受け入れられてはいるが、これらの効果についての知識を既存の放射線防護体制と統合する明らかな方法は存在しない。人間の放射線防護にとって実りのあるアプローチに実際に繋がるかもしれないまた別の問題は、人間以外の生物相を防護するための新しい体制を開発することの必要性である。生態系を、効率良く、かつ現実的に防護する方法を開発するために用いられているブレーンストーミングは、放射線誘発性の癌から人間を防護するという狭い視点での現在の人間の防護から、もっと幅広い討論に繋がる。

有料論文をレンタルして読んだので全文和訳紹介は控えるが、大事なポイントは次のようである。

  • 低線量放射線による影響は、単にDNAへのエネルギー蓄積による影響だけでない。
  • バイスタンダー効果(細胞、組織や個体への放射線照射が、シグナル伝達現象を起こし、良い結果と悪い結果両方が、放射線照射を受けなかった近隣細胞、遠隔組織や別の個体において検知されること)やゲノム不安定性(放射線照射を生き延び、一見健康であるように見えて変異していない細胞が、不安定で変異しやすい子孫を生み出すこと)などの非標的影響というのは、既存の放射線防護の枠組みに当てはまらない。
  • 非標的影響は、おそらく、放射線ストレスを含む環境ストレスへの、非常に敏感な反応であり、適応反応や恒常性反応、あるいは、活性酸素種の増加、変異頻度の増加や、生殖細胞やその他の細胞の死というネガティブな反応などに繋がる。
  • このような非目標影響を考慮したら、人間の放射線防護の目的が、個々の細胞での発癌の防止から、細胞集団もしくは微細環境での変化の防止または適応へと幅広くならなければいけない。
  • これは、多細胞システムから現れつつある特徴を考慮し、組織体の中での複数の段階の変化を予測できるエンドポイントが開発されなければいけないということになる。
  • また、他の物理的や化学的な複数ストレス要因には、放射線との相乗効果あるいは拮抗効果があるため、現在の単体物質の規制ではなく、混合ストレス要因による悪影響の可能性を統合するような規制が必要となる。
  • ICRPが人間へのリスクを評価するためにLNTモデルを使い続けるのは正当化されるだろうが、直線性は、線量と効果の物理的な関係を示唆するというより、単に、個体においての低線量反応の物理的バイオマーカーを用いたリスク推計を可能にする研究が進むまでの、安全なモデルにすぎないということを認めるべきだ。
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上記の論文に言及する論文

"Radiation-induced risks at low dose: moving beyond controversy towards a new vision"

François Bréchignac, François Paquet
Radiation and Environmental Biophysics
August 2013, Volume 52, Issue 3, pp 299-301

Abstract

The paper recently published by Mothersill and Seymour (Radiat Environ Biophys 2013, doi: 10.1007/s00411-013-0472-y) is commented upon by emphasizing on the recommendation not to confound the fields of radiation protection and radiobiological science as a source of controversy. Instead, these authors are proposing a new vision which suggests novel lines of scientific investigations to be addressed. At the moment, these include moving beyond the conceptual approach of DNA alteration through energy deposition in cells, and exploring the striking parallel currently existing between the ongoing individual/population debate in radioecology and that for cells/tissues in radiobiology. These interesting issues are briefly discussed and supported.



「低線量での放射線誘発性リスク:論争を超えて新たな未来像へ」

アブストラクト

最近発表されたマザーシルとセイモアによる論文では、放射線防護と放射線生物科学の分野を、論争の原因であると混同しないようにという推奨が強調されている。代わりに、著者らは、新系統の科学的調査を考慮するべきだと示唆する新たな未来像を提案している。現時点では、これは、細胞内でのエネルギー蓄積によってもたらされるDNAの変化という概念を超えて、放射線生態学においての個体と集団、そして放射線生物学においての細胞と体組織について進行中の討論の間に現存する、驚くほどの類似点を探究するということである。これらの興味深い問題を手短に議論し、支持する。

有料論文をレンタルしたので全文和訳紹介は控えるが、大事なポイントは次のようである。
  • 研究開発分野で定期的に論争が起こるのは、現存するパラダイムに疑問を抱き、討論と熟考を促し、最終的に新しい知見、業績の成功、そして究極的にはさらに深い理解をもたらすきっかけとなるために、健康的である。
  • 放射線防護と、その基礎となる放射線生物学は、分離することができない関連分野であるが、この2つの分野のゴールは同じではなく、同じ原動力に影響されるわけではない。
  • 放射線生物学は、可能性がある影響を、それが有害であってもなくても適切に解釈するために、放射線と生物系・過程の相互作用の機序を理解することが目的である。放射線生物学の原動力は、機序の理解を促すことである。
  • その反面、放射線防護は、それ自体は科学ではないが、簡単なルールとして表現されている防護という現実的なゴールを達成するために、現在の科学の理解を最適に利用するための技術的アプローチである。放射線防護の原動力は、リスクとベネフィット のバランスを取るということに支配される状況内で、様々な状況における運用的適用のための現実的な概念と方法を設定することである。

低線量の生物への影響の解明は、細胞内のエネルギー蓄積を通してのDNAの変化という概念を超えることが必要

  • 現在の放射線防護システムは、外部被ばくによって瞬間的な高線量に被ばくした広島と長崎の生存者の集団に由来する、高線量被ばくで見られた健康影響に基づいている。
  • そのような高線量では、放射線は重要なストレス要因であり、その影響として、細胞内でのエネルギー蓄積がDNAの変化を促し、最終的に癌が誘発される。
  • このシステムは、DNA修復や腫瘍発達のコントロールなどの調節機序の役割を認識してはいるがものの、高線量範囲内での被ばく量に比例した、細胞と組織の相互作用の最終的な巨視的結果(癌誘発)に、完全に基づいている。
  • もっと低い被ばく量では、放射線防護システムは、LNTモデルに基づいて推定することによって、その影響が高線量においてと同じく線量に直線的に相関すると仮定した上でリスクを推定する。
  • この設定は、放射線被ばくを管理するのを助けるのが目的であり、大変低い線量の放射線による影響を評価するためのものではない。
  • そのように大変低い線量では、大変低いエネルギー蓄積率によって見られる影響を解釈するのが不確かとなるため、マザーシルとセイモアは、もっとシステム的な生物学に進むようにと提言しているのである。
  • 大変低い線量では、エネルギー蓄積によるDNAの変化は、支配的なプロセスではなく、単にきっかけとなるプロセスであり、他の機序が著しくなるのかもしれない。
  • DNAの変化に焦点を当てることは、視点がひとつの分子ターゲットに狭まる事になり、転写過程の細胞タンパク質の役割や、線量による修復機序の効率、アポトーシス現象、そして細胞集団と体組織内での他の相互作用などを考慮しないことになる。
  • 実際には、その個体の遺伝的および後成的背景に依存した、細胞間伝達と体組織レベルでの恒常性プロセスが関与していると示唆される。
  • 関与しているかもしれない機序全ての間の関係が非常に複雑なため、システム生物学のアプローチを適用し、放射線の影響が、DNAへの変化だけでなく、他の機序にも基づいているという仮定を調査することを支持する。

現在進行している、放射線生態学においての個体・集団の討論、そして放射線生物学においての細胞・体組織の討論との間には、驚く程の類似点がある

  • 科学的説明が障害に面している場合には、科学コミュニティーは、視野を広げ、他の選択肢や他の境界線からの適切な情報を考慮するために、過去の業績の周囲を離れるという事がなかなかできない。これにおいて、非標的影響に直面し、マザーシルとセイモアは、放射線生物学の前進は、人間と人間以外の生物相の研究の間の相乗作用から得らるものがあるだろうと、非常に適切に述べている。
  • 現在この2つは、それぞれ、人間の放射線防護と環境の放射線防護を、実質互いから独立しながら支持している。
  • 放射線生物学において、非標的影響は、細胞内の細胞機序だけに限定して焦点を当てるのではなく、体組織の恒常性機能と細胞集団内での酸化ストレスに起因する伝達シグナルに関連する機序を考慮することを示唆する。
  • 放射線生態学において進行中の討論は、個体レベルのエンドポイントとしての放射線影響のみに限定して考慮しても、実際の防護の目的である、集団と生態系レベルで起こり得る影響を説明できないことを示唆する。特に、個体レベルでの線量効果関係は、生態系のバランスをコントロールするのに最も重要である、種族と種族の間の関係(細胞間伝達と類似)を説明できない。
  • 生態系アプローチと、それに類似するシステム生物学的アプローチの開発が強く推奨される。大変興味深いことに、放射線誘発性のバイスタンダー効果は分類上のグループと栄養段階を超越するという最近の論文は、そのような相乗作用の探究を完全に支持している。
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上記の論文の最後で言及されている論文

"The induction of a radiation-induced bystander effect in fish transcends taxonomic group and trophic level"
Richard W. Smith, Colin B. Seymour, Richard D. Moccia, Thomas G. Hinton & Carmel E. Mothersill
International Journal of Radiation Biology
April 2013, Vol. 89, No. 4 , Pages 225-233 (doi:10.3109/09553002.2013.754558)

Abstract

Purpose: To extend the investigations of bystander effect induction in fish of the same species as the irradiated fish, to bystander effect induction between fish species and between trophic levels.

Materials and methods: To investigate interspecies bystander effect induction, zebrafish and medaka were irradiated with a 0.5 Gy X-ray dose and then swum with non-irradiated fish of the same and opposite species. To investigate trophic level bystander effect induction, California blackworms were irradiated with the same X-ray dose and then fed to non-irradiated rainbow trout.

Results: Reductions in clonogenic survival of the HPV-G (non-transformed human keratinocytes, immortalized with the human papilloma virus) reporter cell line, treated with tissue explant media, revealed that zebrafish and medaka induced a pro-apoptotic bystander effect in the other species and that, in trout, the normally anti-apoptotic effect caused by the consumption of non-irradiated blackworms was significantly reduced or lost if the blackworms had been irradiated.

Conclusions: These results are the first to show that a radiation- induced bystander effect can transcend taxonomic group and trophic level in fish. This provides further evidence that bystander signals are widespread and conserved and may be transmitted through an ecosystem, as well as between individuals of the same species.


「放射線誘発性のバイスタンダー効果の誘発は、魚の分類上のグループと栄養段階を超越する」

妙訳

放射線照射を受けた魚と同じ種族の魚におけるバイスタンダー効果の誘発と、魚の種族間と栄養段階の間におけるバイスタンダー効果誘発の研究。

  • 種族同志でのバイスタンダー効果の研究として、ゼブラフィッシュとメダカにX線照射した後で、照射されていない同種族と異種族の魚と一緒に泳がせた。
  • 栄養段階のバイスタンダー効果誘発を研究するために、X線照射されたカリフォルニアブラックワームが、照射されていないニジマスに与えられた。
  • ゼブラフィッシュとメダカは、お互いの種族で、アポトーシス促進性のバイスタンダー効果を誘発した。
  • ニジマスでは、照射されていないブラックワームの摂取によって普通に見られる抗アポトーシス効果が、ブラックワームが照射されていたら、かなり減少または消失した。
  • これらの結果は、放射線誘発性のバイスタンダー効果が魚の分類学的グループや栄養段階を超越することを初めて示した。
  • これは、バイスタンダー・シグナルが広汎であり、かつ保存され、そして生態系を通し、また同種族の個体間でも伝達されるという証明になる。

2013年9月3日火曜日

福島第一原発からの最初の放射能プルームは、PM2.5サイズの不溶性球状セシウム粒子を含んでいた

筑波の気象研究所の英語論文「福島原子力事故の初期段階での球状セシウム粒子の放出」 の紹介

元論文
Emission of spherical cesium-bearing particles from an early stage of the Fukushima nuclear accident


アブストラクト和訳 
福島原子力事故は、2011年3月に北半球全体の環境に放射性物質を放出した。日本政府は汚染された住宅地や農地を除染するのに多額の資金を費やしている。しかし、放射性物質の物理的および化学的性質はまだ正確に知られていない。この研究では、事故の比較的初期の段階(3月14−15日)に放出された球状セ シウム粒子を直接観察した。現在仮定されているセシウム粒子とは反対に、これらの粒子はもっと大きく、鉄、亜鉛とセシウムを含み、不溶性である。我々のシミュレーションは、球状セシウム粒子は、主に乾性降下物として地面に落ちたことを示す。球状セシウム粒子の発見は、事故の過程を理解することと、健康影響および環境での滞留時間を正確に評価することへの鍵となるだろう。

本文から要点を抜粋和訳
事故で放出されたセシウムは20kg以下だった。 
放射能プルームは、3月14〜15日と3月20〜21日の2度発生した。 
最初のプルームに含まれていたセシウムは、球状粒子で水に溶けず、鉄と亜鉛と共存し、内部で混在した合金のような状態だった。
これは、カネヤスらによる、2011年3月と4月に採取された検体のセシウムが直径約0.5μmの硫酸エアロゾルに付着していたという報告と異なる。  

球状セシウム粒子は、直径約2μmで、1粒子につき平均して1.4Bqの放射能を含んでいた。




3月20〜21日の2度目のプルームのエアフィルター検体ではエアロゾル粒子によくみられる硫酸とミネラルダストが見つかった。 

シミュレーションモデルでは、他のモデルと異なり、エアロゾル粒子の動態過程を特に考慮し我々の観察に基づいた測定値と粒子の物理的および化学的性質の仮定を用いた。すなわち、3月14−15日の放射性セシウムは直径2.3μmの疎水性粒子であり、3月20−21日のセシウムは親水性の1μm以下の粒子(硫酸など)に付着して運ばれたということである。 最初のプルームからフィルターに付着したエアロゾル粒子は、主に3月14日17:00から3月15日02:00の間に福島第一から放出された。2度目のプルームからのエアロゾル粒子は、主に3月19日20:00から3月20日07:00の間に放出された。

飛灰のような球状エアロゾル粒子は、大体、サイズによって、液状化した物質から生じたり、気化した物質が凝縮する時に発生したりする。 球状セシウム粒子は、硫酸粒子よりも大きくて水に溶けにくく、多くが乾燥降下物として沈着して、福島第一から北西の地域への沈着が(硫酸粒子よりも)少なかった。
事故が進行し、注水が進むにつれ、最初と2番目のプルームでは放出過程に変化があったと思われる。しかし、事故の間の放出過程を解明するには、さらなる研究が必要である。 

この研究の目的は、球状放射性セシウム粒子の存在を示し、粒子効果の適切な理解と評価を可能にする、多様的分野での研究を刺激・促進することである。我々は、セシウム粒子の発見が、下記の研究に密接に関わることになると信じている。 

1)福島第一事故によって放出されたセシウム粒子の構成と球状形は、事故の間に原子炉で何が起こったかを理解する鍵となるだろう。
2)球状セシウム粒子は、水溶性のセシウム粒子よりも地表面での滞留時間が長いだろう。土壌や他の環境内での粒子の滞留時間を再考慮する必要がある。 
3)セシウム粒子の健康影響は、粒子のサイズと疎水性に基づいて評価されるべきである。